「歌舞伎特選DVDコレクション」62号は「奥州安達原」で、平成29年(2017年)11月に歌舞伎座で行われた公演が収録されている。本編87分。音声ガイドが収録されている。
安倍貞任(あべのさだとう)に中村吉右衛門さん、袖萩に中村雀右衛門さん、安倍宗任(あべのむねとう)に中村又五郎さん、八幡太郎義家に中村錦之助さん、平傔仗直方(たいらのけんじょうなおかた)に中村歌六さん、浜夕に中村東蔵さんの配役。
「奥州安達原」は全五段ものの浄瑠璃で、宝暦12年(1762年)9月に人形浄瑠璃として初演され、翌年2月に歌舞伎が初演された。
話が入り組んでいてややこしいので、音声ガイドがあるものの、事前にマガジンであらすじをつかみ、掲載されている人物相関図を見ながら鑑賞するのが良いと思う。
物語的には安倍貞任が主人公なのだが、前半は雀右衛門さん演じる貞任の妻で盲目の袖萩がメインとなる。駆け落ちした夫の貞任が父親の平傔仗直方と敵対関係にあり、親子の再会が叶わず嘆く姿、また、寒空の中互いを思いやる袖萩と娘お君の姿が非常に悲しい。
後半、吉右衛門さん演じる貞任が勅使・桂中納言教氏として登場し、舞台は一層重厚な時代物の雰囲気を醸し出す。黒の衣冠束帯から派手な衣装にぶっかえって貞任の本性を現すところは、いかにも歌舞伎らしい演出で見応えがある。
吉右衛門さんが亡くなった今となっては、本当に貴重な舞台映像になってしまった。
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