歌舞伎オンデマンドで「弥次喜多流離譚(やじきたリターンズ)」を観た。歌舞伎美人での上演時間は 6:15-7:17、7:47-8:57 合計2時間12分で、配信も同じだった。
配役は、弥次郎兵衛に松本幸四郎さん、総長シー子に坂東新悟さん、子分ジャックに大谷廣太郎さん、芳沢綾人に中村隼人さん、親衛隊長タカミに中村鷹之資さん、旗持ちオタマに中村玉太郎さん、伊月梵太郎/娘オリビアに市川染五郎さん、五代政之助/娘お夏に市川團子さん、下剃虎奴に市川青虎さん、家族商店店長寿知喜に市川寿猿さん、特攻隊長ムネに澤村宗之助さん、海賊王ジョニー・テープに松本錦吾さん、緑婆奈々夫人に市川笑三郎さん、天照大神に市川笑也さん、父次右衛門に市川猿弥さん、釜掛之丞に片岡亀蔵さん、ザブエルに市川門之助さん、副支配人つる紫に市川高麗蔵さん、喜多八に市川猿之助さん。
相変わらずドタバタ喜劇の「弥次喜多」。これまでの作品を観ていると、いろいろ楽しめるし、劇中は歌舞伎の名場面パロディ満載で、これまた演目を知っていると笑える。冒頭から「俊寛」のパロディ(幸四郎さんの俊寛を早く観てみたい)、続いて「夏祭浪花鑑」の「住吉鳥居前」のパロディ(9月松竹座で青虎さんが一寸徳兵衛を演じたのは、偶然なのか必然なのか)。
長崎の地で弥次喜多が出会った美しい娘オリビアは、市川染五郎さん一役目。女方は「京人形」以来だそうだ。いつぞやの歌舞伎家話で種明かしをしていたけれど、オリビアは「風と共に去りぬ」のイメージとのこと。そして、先のオリビアと幕間後の二役早替りでのオリビアは眉の形が違う。言われなければ分からない。
一旦幕が閉まり、再び開くとそこは街道筋。美しい娘お夏がお地蔵様にお参りをしている。團子さんの女方初披露。(歌舞伎家話で、本格的な女方は初めてと言っていた)。博打に狂った父次右衛門を改心させるため、弥次喜多、そして、オリビアとお夏が一芝居を打つが、元ネタが分からない。猿弥さんが言う「恐ろしき執念じゃなあ」は四谷様か。
そして、前半の見せ場、弥次喜多と、悪党一味の釜掛之丞、下剃虎奴、子分ジャックに、悪党を捕らえに来た捕手たちが入り乱れての本水を使った立廻り。これまでコロナ禍で制限があったけれど、とうとう本水での立廻りが可能になったのは喜ばしいこと。娘役の染五郎さんと團子さんは立廻りに参加していない。
休憩を挟んだ後の幕は、バイクの排気音と派手なライティングで始まる。湘南の家族商店前に暴走族(?)がたむろしている。梵太郎が金髪で暴走族の総長、政之助が赤毛で親衛隊長と不良化している。家族商店や、梵太郎と政之助の不良化や、寿猿さん演じる店長が入れ歯を飛ばす場面は、図夢歌舞伎「弥次喜多」を観ていると話が分かる。梵太郎とオリビア、政之助とお夏の早替わりも見どころ。
そして、花道から新悟さん演じる総長シー子を先頭に、鬼羅女姫組の一団がやって来た。新悟さんは格好良いし、鷹之資さんと玉太郎さん、インパクトありすぎ。梵太郎率いる夜城組と、鬼羅女姫組の踊り比べは「ウエスト・サイド・ストーリー」を彷彿させる。とんこつラーメンの鞨鼓を胸に「道成寺」を躍るシー子をはじめ、夜城組・鬼羅女姫組のメンバー、さらに、弥次喜多も踊りの見せ場がある。
だが、この幕の最大の見せ場は、寿猿さん演じる店長実は鳩の精が読み上げる後輩たちへのメッセージ(カンペ読み上げ)、そして宙乗りだろう。御年92歳で宙乗りに挑戦する心意気が素晴らしい。
場所は変わって湘南の海岸、オリビアとお夏が梵太郎と政之助に呼び出される。オリビアとお夏、梵太郎と政之助、オリビアと政之助、梵太郎とオリビアという、4通りの早替わりが目新しい。
最後は歌舞伎座でのオークション。笑三郎さん演じる緑婆奈々(グリーンバナナ)婦人はお美しい。(笑三郎さんは緑色が好き)。笑也さん演じる天照大神は神々しい。歌舞伎座の危機が回避されたということで、「歓喜の舞」を皆で踊る。中央でシー子の新悟さんと芳沢綾人の隼人さんが踊るのは「オグリ」再現ではないか。(「オグリ」南座で観たかった)。弥次郎兵衛、喜多八、梵太郎、政之助の4人が歌舞伎座宣伝のため宙乗りで飛び立って幕となった。
観客を楽しませるために、様々なことを詰め込んだ「弥次喜多」だった。
このシリーズ、次はあるのか?
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