演目・配役・上演時間
一、末広がり
配役 太郎冠者:尾上右近 女大名:中村米吉
上演時間 6:40-7:00 20分
二、夕霧伊左衛門 廓文章 吉田屋
配役 藤屋伊左衛門:松本幸四郎 扇屋夕霧:中村壱太郎
上演時間 7:15-8:00 45分
観劇記録
座席数が定数の半分以下で販売されたものの、今年の顔見世の第一部・第三部の売れ行きは悪いと判断されたのか、某クレジットカード会員向けに1等席の割引チケットが発売されたので、迷わず申し込んだ。
開演午後6時40分、終演午後8時のため、先に食事を済ませてから南座へ。
まずは、「末広がり」。狂言の「末広がり」をもとにした舞踊で、初演は江戸時代。長唄「末広がり」は舞踊としてよく上演されているそうだが、歌舞伎での上演記録は無いようで、番付の上演記録は江戸期の次に今回の上演が記載されていた。
女大名から末広がりを買ってこいと命ぜられた太郎冠者。末広がりが何か知らない太郎冠者は、古い傘を買わされて酒を飲んで戻ってくる…という話。女大名の米吉さんはとてもかわいらしく、太郎冠者の右近さんの踊りは軽快で、まりを傘の上で回す曲芸まで披露していた。太郎冠者の肩衣は背中に4個、左右の胸元に1個、合計6個の瓢箪が描かれていて、無病息災の意味。途中、肩衣を脱いで背面の絵を示し、また、「右近」の署名も指さして右近さん自身が絵を描いたとアピールしていたものの、残念ながら拍手が少なかったような気がした。
続いて「吉田屋」。今回は清元を使った江戸の演出で、清元の立唄を清元栄寿太夫さんが勤める。栄寿太夫としては、関西では初出演かな。15分の幕間で尾上右近から清元栄寿太夫に早変わり。芸達者な右近さんだが、凄すぎる。栄寿太夫さんの唄を生で聴くのは、2018年11月歌舞伎座へ遠征したときの「十六夜清心」以来2回目になる。伸びのある澄んだ声に驚いた。
新型コロナウイルス感染拡大防止で出演者を減らすためか、冒頭の吉田屋店先での餅つきの場面なし。花道から伊左衛門の幸四郎さんが登場し、吉田屋の中へ声をかける。と、出てきたのは若い者仁助の片岡千次郎さん。ただ今放送中のNHK連続テレビ小説「おちょやん」に、早川延四郎役で出演していることもあり、登場したときの拍手が大きかった。続いて、喜左衛門女房おきさに大抜擢された片岡千壽さんが登場。今回は喜左衛門が登場しないので、おきさが伊左衛門と夕霧を取り持つ重要な役どころになる。
新年を迎える準備の整った吉田屋の座敷にて、炬燵で横になって夕霧を待つ伊左衛門。炬燵から出て、三味線を手に清元に合わせてつま弾く。これは上方の演出では観たことがない。そうこうするうちに、奥から豪華な打掛姿の夕霧の壱太郎さんが登場する。しばし、伊左衛門と夕霧のやり取り。伊左衛門の勘当が許され、夕霧の身請けの金が運ばれ、伊左衛門と夕霧はめでたく夫婦に。この時、夕霧の壱太郎さんは、先月亡くなった坂田藤十郎さんが使用していた藤の花の打掛を着ていた。こうやって、伝統は継承されていく。
三部制で、各部が2時間程度のため、観劇するのは楽だったものの、長丁場で疲れるいつもの顔見世らしくなく、やはり物足りない。来年は通常開催できますように。
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