「歌舞伎特選DVDコレクション」34号は「一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり) 檜垣(ひがき)・奥殿(おくでん)」で、平成28年(2016年)9月に歌舞伎座で行われた公演が収録されている。 本編83分(檜垣約29分・奥殿約54分)。なお、音声解説は収録されていない。
一條大蔵長成に中村吉右衛門さん、吉岡鬼次郎に尾上菊之助さん、お京に中村梅枝さん、八剣勘解由(やつるぎかげゆ)に中村吉之丞さん、成瀬に中村京妙さん、茶亭与市に嵐橘三郎さん、常盤御前に中村魁春さん他の配役。マガジン表紙に記載されていないものの、檜垣に登場する女小姓弥生を中村梅丸(現・莟玉)さんが勤めている。
原作は享保16年(1731年)に初演された全五段からなる人形浄瑠璃「鬼一法眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき)」で、「一條大蔵譚」は四段目にあたる。マガジンにあらすじは書いてあるものの、時代物の義太夫狂言で音声ガイドがないのは、歌舞伎初心者には厳しいかもしれない。(このシリーズを30巻以降も買い続けているのは、それなりの歌舞伎愛好者だけなのかもしれないが)。
一番の見どころは、吉右衛門さん演じる大蔵卿の「檜垣」での阿呆ぶりと、「奥殿」後半での凛々しさの対比。2020年11月歌舞伎座で上演された「奥殿」を「歌舞伎オンデマンド」で観たけれど、やはり「檜垣」の阿呆ぶりがないと、「奥殿」の面白みが半減してしまうことを再認識した。また、「奥殿」の前半は、魁春さん演じる常盤御前が、源義朝との間に生まれた今若、乙若、牛若の三人の子供を守るために平清盛に身を任せたこと、楊弓は平家調伏を祈願していたことを話す、クドキが見せ場になる。
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