「歌舞伎特選DVDコレクション」18号は「怪談乳房榎(かいだんちぶさのえのき)」で、平成23年(2011年)8月に新橋演舞場で行われた公演が収録されている。 本編101分。
うわばみ三次・下男正助・菱川重信・三遊亭円朝に中村勘太郎(現・勘九郎)さん、お関に中村七之助さん、住職雲海に片岡市蔵さん、磯貝浪江に中村獅童さん他の配役。
テレビ放送に使用された映像を使っているためか、出演者の字幕が入っていた。
この作品は、三遊亭圓朝さんが作った怪談噺をもとにしたもので、明治時代に歌舞伎化された。大正時代に二世實川延若(じつかわえんじゃく)さんが演じた際、原作に登場しないうわばみの三次の役を加え、三次・正助・重信の三役を早替わりする演出となって評判になり、三世實川延若さんが受け継いだ。平成2年(1990年)に当時の中村勘九郎(十八世中村勘三郎)さんが三世延若さんの指導を受けて上演し、2012年に十八世中村勘三郎さんが亡くなった後は当代の勘九郎さんが受け継いでいる。
物語は少々ややこしいので、最初にマガジンであらすじを抑えておいた方が分かりやすいと思う。落語から歌舞伎化した作品ということもあり、音声解説は少なめ。この演目はストーリーを楽しむというより、主役の重信・正助・三次の三役を早替わり、そして、本水を使った立ち廻りを楽しむもの。
絵師・菱川重信の妻・お関が茶店で休んでいると、酔っ払いに絡まれてしまう。そこを助けたのが、磯貝浪江。(実は浪江はかつてお関の伯父の主家から二千両を奪っており、家来だったうわばみの三次も共犯だった)。浪江は重信に弟子入りする。重信が高田南蔵院の天井に絵を描くため、下男正助を伴って家を留守にすると、その間に浪江はお関に不義をしかける。浪江は正助と義兄弟となり、重信殺しを手伝わせる。その夜、南蔵院に殺されたはずの重信が現れて絵を完成させ、消えてしまう。浪江は正助に重信とお関の子供の真与太郎(まよたろう)を殺すよう命じ、三次に正助と真与太郎を殺すよう命ずる。正助が角筈十二社(つのはずじゅうにそう)の大滝に真与太郎を投げ入れると、重信の霊が真与太郎を抱いて現れる。三次が正助を殺そうとして争いになり、正助が三次を殺して真与太郎を抱えて逃げる…。
場面変わって、円朝の高座。乳房榎のいわれや真与太郎の仇討の話は、円朝が語って幕となった。
あれ、2017年5月に松竹座で観たのと違う。あの時は円朝が登場しなくて、中村勘九郎さんが菱川重信・下男正助・うわばみの三次の三役で、中村七之助さんがお関、市川猿之助さんが磯貝浪江、そして、市川猿弥さんがお関のいとこの松井三郎の配役。角筈十二社の場に続いて乳房榎の場があり、松井三郎が手助けして、正助と真与太郎が浪江を討ったところで切り口上だった。
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