演目・配役・上演時間
一、棒しばり
配役 次郎冠者:中村勘九郎 太郎冠者:中村橋之助 曽根松兵衛:中村扇雀
上演時間 4:00-4:40 40分
二、天守物語
配役 天守夫人富姫:中村七之助 姫川図書之助:中村虎之介 朱の盤坊:中村橋之助 亀姫:中村鶴松 小田原修理:片岡亀蔵 舌長姥/近江之丞桃六:中村勘九郎 薄:中村扇雀
上演時間 5:10-6:55 1時間45分
観劇記録
姫路城で「天守物語」を上演ということで、これは是が非でも遠征しなければとチケットぴあの先行抽選を申し込んだところ、運良く5月4日第二部の松席が取れた。(こんな貴重な機会、各種手数料は気にしない)。「播州皿屋敷」は話が暗いし、「鰯賣戀曳網」はいつか観る機会があるだろうと思い、姫路城の天守閣に上がって、第二部を観劇する日帰り旅行にした。
京都から姫路は新幹線で約45分。そんなに遠い所ではない。朝に出発して、正午過ぎに姫路城に着くと、入城口まで既に長蛇の列。20分くらい並んでようやくお城に入り、そこから天守閣を目指す。入城口で天守閣口まで60分の待ち時間との案内があったが、その通りだった。天守閣に入っても、上の階が混雑しているからと2階で待たされた。天守閣内に照明設備は殆どなく、窓際は明るいものの中心部は少し暗い。最上階に上がったときには、14時を回っていた。
まずは、長壁(おさかべ)神社をお参りして、南の窓へ。遠くに姫路駅、眼下には平成中村座の小屋が見える。しばし景色を堪能したのち天守閣を下り、お菊井戸を見て出口に向かった。
劇場前の三十件長屋は入場券がなくとも入ることができるので、結構混雑していた。さっさと平成中村座の入口に行き、チケット半券を切ってもらって、お弁当と筋書きを購入、イヤホンガイドを借りて劇場内へ。
今回の松席は花外1列だったので隣の観客はなく、座布団2枚重ねで足が楽だった。以前と座椅子が変わったのか、背もたれも快適。そうこうするうちに、開演の時間となった。
「棒しばり」は何も考えずに楽しめる演目。両手を棒に縛られた次郎冠者の勘九郎さん、両手を後ろ手に縛られた太郎冠者の橋之助さん。手を使わず踊らないといけないから大変だ。踊りに定評のある勘九郎さんはもちろんのこと、橋之助さんも見事に踊っていた。
「天守物語」では開演前から場内が暗くなるのでお早めにお席にお戻り下さい、とのお茶子さんたちが口々に案内していた。(平成中村座は他の劇場のような、マイクでの場内アナウンスはない)。いそいそといそいそとお弁当を食べ、お手洗いに行って戻ってきたら、次第に場内が暗くなってきた。カラフルな光と音楽が幻想の世界へと誘う。そして、幕が開いた。
舞台は、姫路城天守閣最上階。数時間前にいた場所を重ね合わせながら、芝居を観る。舞台奥に鎧櫃に乘った獅子頭が置かれ、天守の区域を表す(と思う)4本の柱が立っている。舞台前方で、腰元たちが白露で秋草を釣っている。雷雨となり、外出していた富姫が帰って来た。富姫の七之助さん、本当に美しかった。玉三郎さんが演出し、また、玉三郎さんの打掛を着ていることもあってか、七之助さんと玉三郎さんが重なって見えた。
猪苗代から亀姫がやって来た。鶴松さんの亀姫は可愛らしい。そして、お土産の生首をなめ回す舌長姥の勘九郎さんが不気味な雰囲気を醸し出している。
物語の後半、いよいよ虎之介さん演じる図書之助が富姫のいる天守へやって来る。図書之助が一旦下りたものの、雪洞の灯りを大蝙蝠に消されたので灯りをもらおうと上がって来た、というくだりは、昼に天守閣で待たされた空間や急な階段を思い出し、妙に納得しながら観ていた。
武士たちに獅子頭の目を壊され、富姫や図書之助たちの目が見えなくなる。勘九郎さん二役目の近江之丞桃六が獅子の目を直し、富姫たちの目が見えるようになる。ここで、後ろが開き、姫路城の天守閣が借景となった。この瞬間のために、松席を取ったのよ。(が、舞台上の柱…)。
なんとも不思議な物語は幕となり、カーテンコールとなった。2回目のカーテンコールで、舞台下手から坂東玉三郎さんが登場!えっ、玉様、姫路に来ていたの!演出家としての登場ね。本当にサプライズだった。
「天守物語」はシネマ歌舞伎やアシェットの DVD で観たときは、何とも不思議な話だという程度にしか感じなかった。しかし、実際の生のお芝居、それも、客席との距離の近い平成中村座で、そして、芝居の舞台となった姫路城で観ると、物語が生き生きと感じられ見方が変わった。
玉様サプライズを含め、充実した観劇だった。
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