「歌舞伎特選DVDコレクション」87号は「菅原伝授手習鑑 車引・寺子屋」で、平成30年（2018年）1月に歌舞伎座で行われた公演が収録されている。本編118分（車引32分、寺子屋86分）。音声ガイドが収録されている。
車引は、松王丸に松本幸四郎さん、梅王丸に中村勘九郎さん、桜丸に中村七之助さん、杉王丸に大谷廣太郎さん、金棒引藤内に中村亀鶴さん、藤原時平公に坂東彌十郎さんの配役。寺子屋は、松王丸に松本白鸚さん、武部源蔵に中村梅玉さん、千代に中村魁春さん、戸浪に中村雀右衛門さん、涎くり与太郎に市川猿之助さん、百姓良作に澤村由次郎さん、百姓田右衛門に大谷桂三さん、百姓麦六に市川寿猿さん、百姓鎌助に嵐橘三郎さん、百姓米八に片岡松之助さん、百姓仙兵衛に中村寿治郎さん、百姓八百吉に中村吉之丞さん、百姓吾作に中村東蔵さん、春藤玄蕃に市川左團次さん、園生の前に坂田藤十郎さんの配役。高麗屋三代同時襲名に相応しい、超豪華な出演者たちが華を添える。そして、幸四郎さんも白鸚さんも松王丸を演じるという、重厚な舞台が収録されている。
車引での幸四郎さんの松王丸は、若々しくて力強い。勘九郎さんの梅王丸、七之助さんの桜丸ともバランスが取れている。そして、彌十郎さんの時平が不気味な貫禄を見せている。
寺子屋は、通常の公演でも見どころが多いのに、今回は白鸚さん襲名披露狂言に加え、2017年10月新橋演舞場で上演された「ワンピース」出演中に大けがを負った市川猿之助さんが舞台に復帰したということでも、重要な公演となった。
白鸚さんの松王丸は、さすがの貫禄。魁春さんの千代は、愛情深い母の姿が見事だった。対する、梅玉さんの源蔵、雀右衛門さんの戸浪も素晴らしいものだった。寺子たちを迎えにきた百姓たちも、人間国宝の東蔵さんを含め、いつも重要な脇役を勤めるベテランたちが揃った。けがのことがあったとはいえ、猿之助さんが涎くりを勤めるということは、今後、もうないと思う。藤十郎さんの園生の前、出演時87歳ということで、この映像は貴重なものだろう。
コメント