「歌舞伎特選DVDコレクション」71号は「神明恵和合喧嘩(かみのめぐみわごうのとりくみ)」(通称「め組の喧嘩」)で、平成13年(2001年)2月に歌舞伎座で行われた公演が収録されている。本編109分。音声ガイドは収録されていない。 4:3映像のため、両サイドに灰色の帯がある。
め組辰五郎に坂東三津五郎さん、女房お仲に中村時蔵さん、焚出し喜三郎に尾上菊五郎さん、柴居町藤松に尾上辰之助(現・松緑)さん、露月町亀右衛門に坂東秀調さん、宇田川町長次郎に坂東正之助(現・河原崎権十郎)さん、おもちゃの文次に中村信二郎(現・錦之助)さん、背高の竹に市川高麗蔵さん、山門の仙太に片岡愛之助さん、伊皿子の安三に坂東亀三郎(現・彦三郎)さん、青山の光吉に坂東巳之助さん、辰五郎倅又八に中村種之助さん、島崎楼女将おなみに中村万次郎さん、江戸座喜太郎に2代目中村又五郎さん、九竜山浪右衛門に市川左團次さん、四ツ車大八に中村富十郎さん、尾花屋女房おくらに4代目中村雀右衛門さんの配役。マガジンの表紙に載っていないけれど、島崎抱えお咲に澤村宗之助さん、小按摩ちょんまに坂東橘太郎(現・市村橘太郎)さん、三ッ星半次に中村玉太郎(現・松江)さん、狸穴の重吉に大谷桂三さん、御成門の鶴吉に坂東亀寿(現・亀蔵)さん、新銭座の吉蔵に中村勘太郎(現・勘太郎)さん、二本榎の若太郎に中村七之助さん、烏森の竹次に尾上松也さん、中門前の専坊に中村梅枝さん、やんまの豊に中村萬太郎さん、ととまじりの栄次に坂東新悟さん、大竜山文五郎に市川男寅(現・男女蔵)さん、神路山花五郎に片岡亀蔵さん、御輿岳芳五郎に坂東彌十郎さんも出演している。坂東三津五郎さん襲名披露狂言ということで、豪華な配役での上演となった。
「め組の喧嘩」は、江戸時代に芝神明の境内で起こった鳶と力士の喧嘩をもとに、竹柴其水(たけしばきすい)が書いたもので、明治23年(1890年)に初演された。予備知識として、鳶の町火消は町奉行の監督下にあること、また、力士は大名家お抱えで帯刀を許され、寺社の境内で行われる相撲興行は寺社奉行の管轄であることを押さえておくと、最後の結末が分かりやすい。
この作品の一番の見どころは、三津五郎さん演じる辰五郎の粋で親分肌の姿なのは言うまでもない。そして、2022年現在アラサーの花形役者として活躍する皆さんが、小さな鳶として活躍するところも見逃せない。特に、三津五郎さんの息子の巳之助さんは、坂東彌十郎さん相手の一対一の立ち廻りで、側転したり身軽なところを見せている。一方、愛之助さんや松也さん、勘太郎(現・勘九郎)さんや七之助さんなどは、出番が短すぎてちょっと残念だった。(2001年当時としては、仕方がないけど)。
鳶たちが集まり、一つの桶から同じ柄杓を使って水杯を交わす場面があるので、「め組の喧嘩」の上演はこのコロナ禍では当分難しいだろう。
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