「歌舞伎特選DVDコレクション」48号は「瞼の母」で、平成29年(2017年)12月に歌舞伎座で行われた公演が収録されている。本編98分。音声ガイドは収録されていない。
番場の忠太郎にに市川中車さん、金町の半次郎に坂東彦三郎さん、板前善三郎に坂東亀蔵さん、娘お登世に中村梅枝さん、半次郎妹おぬいに中村児太郎さん、夜鷹おとらに中村歌女之丞さん、鳥羽田要助に片岡市蔵さん、素盲の金五郎に河原崎権十郎さん、半次郎母おむらに市村萬次郎さん、水熊のおはまに坂東玉三郎さんの配役。
長谷川伸の作品で、昭和6年(1931年)3月に東京・明治座で初演された。
昭和初期に初演された新歌舞伎なので、台詞は聞き取りやすく、分かりやすい。幼い頃に生き分かれた母親を思い慕う忠太郎の姿に泣かされる。
作者の長谷川伸は3歳の時に母親と別れ、音信不通となったが、この作品が評判になったことで、47年ぶりに実母と再会したとのこと。また、忠太郎を演じる中車さんも、両親の離婚により幼い時に父親と別れ、成人してから会いに行って拒絶された、まさに”瞼の父”そのものを経験している。
作者が自分の生い立ちを作品に投影するのはよくあることだろうけれど、演者の実体験が作品と重なってくるのは、そうそうあるものではない。
原作は青空文庫に収録されている。そこには、異本として、数行追加し結末を変えたものも収録されている。
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