歌舞伎オンデマンドで「天竺徳兵衛韓噺(てんじくとくべえいこくばなし)」を観た。歌舞伎美人での上演時間は序幕が 11:00-11:37 37分、大詰めが 11:57-1:26 1時間 29分、合計2時間6分で、配信も同じだった。
配役は、天竺徳兵衛に尾上松緑さん、梅津掃部(かもん)に坂東亀蔵さん、佐々木桂之介に坂東巳之助さん、銀杏の前に坂東新悟さん、奴磯平に中村吉之丞さん、山名時五郎に中村松江さん、宗観妻夕浪に市川高麗蔵さん、吉岡宗観に中村又五郎さん。
「天竺徳兵衛韓噺」は初めて観る演目。四世鶴屋南北の出世作で、佐々木家の「浪切丸」紛失、佐々木家家老の吉岡宗観が実は蝦蟇の妖術使いで国家転覆を目論んでいたこと、船頭・天竺徳兵衛が実は宗観の子供であったことなど、物語が複雑に入り組んでいる。頻回に上演される演目ではなく、この10年では2018年1月新橋演舞場(吉岡宗観奥座敷から大清寺仙人閣まで)にて中村獅童さんの徳兵衛、2019年10月国立劇場(北野天満宮鳥居前から梅津掃部奥座敷庭先まで)にて中村芝翫さんの徳兵衛で通し上演された。
序幕の「北野天神境内の場」「北野天神別当所の場」は、佐々木家のお家騒動、佐々木桂之介と梅津掃部の妹の銀杏の前の恋、山名時五郎の横恋慕を描いている。
松緑さん演じる天竺徳兵衛は、大詰の「吉岡宗観邸の場」と「吉岡宗観邸裏手水門の場」で大活躍する。天竺帰りの徳兵衛は赤毛でくりくり巻いた髪にアイヌ模様の着物(そして、裃着用)で、日本人離れした風貌をみせている。
異国話は現代的な話題で観客は大受けしている。琉球では、てびちだの海ぶどうだのゴーヤーだの食べ物の話。与那国島ではスキューバダイビング。マカオではギャンブル。「その船玉の毒賽(どくざい)をぽんと打ち込む捨碇、船丁半の側中(かわじゅう)を引っさらってくる」という台詞、「若殿様(巳之助さんのこと)も持ち役の」と続くので調べてみたら「白浪五人男」の南郷力丸(確かに、巳之助さんの持ち役)の台詞だった。細かいネタを入れている。マラッカ海峡を抜けて天竺へ到着し、現地のカタカリと藤間流の踊り比べをした(若殿様は坂東流の家元に生き写しという台詞もあった)というところで、異国話は終わった。ここは上演の度に変わるのか?
吉岡宗観と会ってすぐ、徳兵衛は宗観が今日中に剣難に合って果てる相があると断言する、通常では考えられない展開となる。そして、その人相を見る実観の方法が親子の証となって、蝦蟇の妖術を伝授するのだから凄い話だ。桂之介を逃がした宗観は切腹し、その首を徳兵衛が切り落とす。妖術を使い、宗観の首を手にした徳兵衛が大蝦蟇の上に乘って屋台崩しで登場する仰天の演出。宗観の首を咥え大蝦蟇の上で見栄を切る徳兵衛は、力強くもあり不気味でもあった。
「吉岡宗観邸裏手水門の場」では、宗観の首を咥えた着ぐるみ蝦蟇が出てきて立ち廻りとなるが、中の人は松緑さんだったのに驚いた。主役が着ぐるみを着て立ち廻りすることもあるのね。で、最後は着ぐるみを脱いで徳兵衛が現れ、最後は宗観の首を咥えて六方で引っ込んだ。
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