歌舞伎オンデマンドで「天竺徳兵衛新噺(てんじくとくべえいまようばなし) 小平次外伝」を観た。歌舞伎美人での上演時間は、11:00-12:08 1時間8分で、配信も同じだった。
配役は、小平次/女房おとわに市川猿之助さん、馬士多九郎に坂東巳之助さん、妹おまきに中村米吉さん、奴磯平に市川男寅さん、百姓正作に嵐橘三郎さん、庄屋満寿兵衛に市川寿猿さん、尾形十郎に尾上松也さん。
「天竺徳兵衛新噺」は、四世鶴屋南北が書いた「天竺徳兵衛韓噺(てんじくとくべえいこくばなし)」に、同じく南北が書いた「彩入御伽草子(いろえいりおとぎぞうし)」の木幡小平次の怪談を入れ込み、昭和57年(1982年)に三代目市川猿之助さんが初演したもので、当代猿之助さんも平成24年(2012年)に博多座と明治座で上演している。今回は、「小平次外伝」として、小平次の幽霊話を中心に構成された。
猿之助さんの小平次とおとわの早替りや、小平次の幽霊の仕掛けで、1時間強の間にスピーディーに物語が進む。最後は悪役のおとわが小平次の幽霊に殺され(幽霊がおとわの首を持って出てくる)、また、多九郎も十郎に殺されて話が完結して幕となるので、怪談話なのになぜか観ていて楽しい。9月の「東海道四谷怪談」とは対照的だった。
猿之助さんの早替りはいつもながらに見事で、特に悪婆(おまきの台詞にもあったけれど)おとわは真骨頂。
おとわの最初の着物が八咫烏(足が3本だった)と髑髏の柄、着替えた着物も蝙蝠の柄でおどろおどろしさがあったかと思えば、着物の裏地に巳之助さんの紋(三つ大)と米吉さんの紋(揚羽蝶)が交互に並んでいた。また、手にした羽織はカタカナの「キ」とひらがなの「の」、そして卅のように横棒に縦線が4本入った柄で「キの四(喜熨斗:猿之助さんの本名)」をあらわしていて、細かいところに遊び心が見られた。
そうだった、最初の場面の「蛍が沼」に咲く白い花はオモダカかな。澤瀉屋のオモダカ。こういうところに気づくと、ますます楽しい。
短時間の出演だったけど、寿猿さんのお元気な姿が見られたのも良かった。
妹おまきの米吉さんが意外とはまり役だったのに驚いた。「びびびびびー」の台詞で「すし屋」のお里を思い出したが、米吉さんはお里も似合いそうだ。
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