「歌舞伎特選DVDコレクション」54号は「名月八幡祭」で、平成22年(2010年)7月に新橋演舞場で行われた公演が収録されている。本編104分。音声ガイドは収録されていない。
縮屋新助に坂東三津五郎さん、芸者美代吉に中村福助さん、船頭三次に中村歌昇(現・又五郎)さん、松本女房おつたに中村歌江さん、幇間寿鶴に市川寿猿さん、魚惣女房お竹に市川右之助(現・齋入)さん、藤岡慶十郎に中村歌六さん、魚惣に市川段四郎さんの配役。
「名月八幡祭」は、河竹黙阿弥の「八幡祭小望月賑(はちまんまつりよみやのにぎわい)」を池田大伍が改作したもので、大正7年(1918年)に初演された。新歌舞伎なので、台詞は聞き取りやすく、また、話の筋も分かりやすい。
越後からの行商人・新助が、深川芸者の美代吉に翻弄され、挙句の果てに正気を失ってしまう。深川の富岡八幡宮の例祭の日、雨の中で新助は美代吉を殺してしまうが、舞台上に実際の雨を降らし(本雨)、惨くも美しい歌舞伎らしい見せ場となっている。誰もいない舞台で、雲が次第に晴れて満月が輝き、余韻を残して幕(定式幕)が閉まるのは、古典歌舞伎にはない斬新さだった。
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