「歌舞伎特選DVDコレクション」43号は「天保遊侠録(てんぽうゆうきょうろく)」で、平成21年(2009年)8月に歌舞伎座で行われた公演が収録されている。本編76分。音声ガイドは収録されていない。
勝小吉(こきち)に中村橋之助(現・芝翫)さん、松坂庄之助に中村勘太郎(現・勘九郎)さん、大久保上野介に坂東彌十郎さん、勝麟太郎に中村宗生(現・福之助)さん、井上角兵衛に片岡亀蔵さん、阿茶の局に市村萬次郎さん、八重次に中村扇雀さん他の配役。
この作品は昭和13年(1938年)5月に初演された真山青果の作品で、勝麟太郎(後の勝海舟)の父親である勝小吉を主人公に、任侠と息子への愛情を描いている。昭和に初演されたものなので、台詞は聞き取りやすく、話の筋も分かりやすい。
優秀な息子の麟太郎の将来を考え、小吉は御役を得るため上役をもてなす宴席を設ける。しかし、役人たちの横柄さに、甥の庄之助が暴れて小吉も啖呵を切ってしまう。その場を収めたのが小吉の義理の姉に当たる中臈・阿茶の局。将軍家の若君に奉公させるため、阿茶の局は麟太郎を連れて江戸城へ向かう…。
小吉・麟太郎の親子を、本当の親子である橋之助(現・芝翫)さんと宗生(現・福之助)さんが演じているけれど、当時11歳の宗生さんの演技に驚いた。子供が子役の年齢で、実の親子が親子の役を勤めるのは、ありそうでなかなかないこと。貴重な上演記録でもある。ちなみに、庄之助は小吉の甥だが、勘太郎(現・勘九郎)さんも橋之助(現・芝翫)さんの実の甥にあたる。
コメント