「歌舞伎特選DVDコレクション」38号は「頼朝の死」で、平成22年(2010年)10月に新橋演舞場で行われた公演が収録されている。 本編85分。音声ガイドは収録されていない。
源頼家に中村梅玉さん、尼御台所政子に中村魁春さん、畠山重保に中村錦之助さん、小周防に片岡孝太郎さん、別当定海に市川男女蔵さん、別当慈円坊祐玄に中村亀鶴さん、音羽に中村歌江さん、藤沢清親に片岡市蔵さん、榛谷重朝に市川門之助さん、中野五郎に市川右之助(現・齋入)さん、小笠原弥太郎に坂東秀調さん、大江広元に市川左團次さん他の配役。
この作品は真山青果の手による新歌舞伎で、昭和7年(1932年)に初演された。「頼朝の死」というタイトルだが、源頼朝は登場しない。新歌舞伎なので、台詞は分かりやすく、話の筋も追いやすい。
頼朝と政子の息子である頼家は、偉大な父の死の真相を知りたいと強く願うものの叶わない。一方、頼朝の死についての真実を知る尼御台所政子、畠山重保、大江広元の三人、とりわけ主殺しの罪を背負った重保も、源家を守るために苦悩し、そして、重保から真相を聞かされた小周防が犠牲になる。終盤での、梅玉さんの頼家と、魁春さんの政子、錦之助さんの重保による台詞の応酬は、真山青果の作品らしい非常に見ごたえのあるものだった。「家は末代、人は一世」と言い切り、あくまでも家を守る姿勢の政子が、尼の姿ながら武士以上に凛々しかった。
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