「歌舞伎特選DVDコレクション」27号は「花魁草」で、平成23年(2011年)8月に歌舞伎座で行われた公演が収録されている。 本編76分。
お蝶に中村福助さん、幸太郎に中村獅童さん、米之助に中村勘太郎(現・勘九郎)さん、客幸吉に片岡亀蔵さん、お糸に坂東新悟さん、小料理屋亭主に嵐橘三郎さん、小料理屋女房に中村歌江さん、五兵衛に片岡市蔵さん、お八重に市川高麗蔵さん、勘左衛門に坂東彌十郎さん、お栄に中村扇雀さん他の配役。
この作品は劇作家の北条秀司が書いたもので、昭和56年(1981年)に尾上梅幸のお蝶、尾上菊五郎の幸太郎で初演された。昭和に作られた新歌舞伎のため、台詞や話は分かりやすい。
安政の大地震で江戸から逃げてきた吉原の女郎・お蝶と、猿若町の大部屋役者・幸太郎が中川の土手で出会う。二人は栃木の百姓・米之助に助けられた縁で家を借り、だるま作りで生計を立てていた。米之助は祝言を挙げるようすすめるも、お蝶は自分の母親、そしてお蝶自身も殺人を犯していたことから、幸太郎と夫婦になることを躊躇していた。そこへ、日光詣帰りの猿若町の座元勘左衛門や芝居茶屋の女将お栄がやってきて、幸太郎に芝居へ復帰するよう勧め、お蝶と幸太郎は江戸へ行く(しかし、お蝶は幸太郎を江戸へ送ると、しばらくして栃木へ戻る)。6年後、人気役者となった幸太郎はお蝶会いたさに米之助の家を訪ねるものの、お蝶は数年前から行方知れずだった。人々が芝居の船乗り込みを追いかけて去っていくと、幸太郎の乗った船を一人見送るお蝶の姿…。悲しい愛の物語。
幸太郎を愛するが故、母親から続く殺人の血に悩み、幸太郎の出世を願って身を引く悲しい女性の姿を、福助さんが見事に演じている。また、お蝶を恋い慕う幸太郎を獅童さんが熱演している。「あらしのよるに」のがぶといい、「瞼の母」の忠太郎といい、獅童さんは一途に相手を想う役がはまっている。
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