「歌舞伎特選DVDコレクション」57号から60号は、4号にわたって平成21年(2009年)11月に歌舞伎座で行われた「仮名手本忠臣蔵」が収録されている。58号は「四段目・道行旅路の花聟」で、本編127分。音声ガイドが収録されいる。
「四段目」は、塩冶判官(えんやはんがん)に中村勘三郎さん、石堂右馬之丞(いしどううまのじょう)に片岡仁左衛門さん、顔世御前に中村魁春さん、大星力弥に片岡孝太郎さん、赤垣源蔵に中村松江さん、冨森助右衛門に市川男女蔵さん、佐藤与茂七に中村萬太郎さん、矢間重太郎に澤村宗之助さん、斧九太夫に松本錦吾さん、木村岡右衛門に澤村由次郎さん、大鷲文吾に坂東秀調さん、原郷右衛門に大谷友右衛門さん、薬師寺次郎左衛門に市川段四郎さん、大星由良之助に松本幸四郎(現・白鸚)さんの配役。
「道行旅路の花聟」(通称:落人)は、早野勘平に尾上菊五郎さん、鷺坂伴内に市川團藏さん、腰元お軽に中村時蔵さんの配役。
「四段目」のクライマックスは何といっても塩冶判官の切腹。厳粛な場面のある「四段目」は、歌舞伎も文楽も「通さん場(とおさんば)」として上演中における客席の出入りを止めている。もっとも、DVD ではそのような制約はないので、気楽に鑑賞して問題ない。しかし、中村勘三郎さん演じる塩冶判官の無念、そして、最期に辛うじて間に合った松本幸四郎さん演じる大星由良之助の仇討ちへの決意は、画面越しでもひしひしと伝わってくるので、こちらもいつしか背筋を伸ばし息を詰めている。
「道行旅路の花聟」(通称:落人)は、一転、華やかな舞踊劇。恋人のお軽との逢瀬を楽しんでいて主君の大事に居合わせなかった早野勘平が、お軽の実家に身を寄せるため旅に出ようとしたところ、お軽に気がある鷺坂伴内が勘平を捕らえにやってきたのを蹴散らし、二人で落ちていく「三段目」裏門の段を舞踊劇にしたもの。
「落人」の最後は、下手から上手に鷺坂伴内を追い立てるように定式幕が引かれて、遂に伴内が自分で定式幕を引いて引っ込む演出があるけれど、収録されているものは、伴内と花四天が本舞台で形を作って、上手から下手に幕が引かれるものだった。
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