歌舞伎特選DVDコレクション30 らくだ

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「歌舞伎特選DVDコレクション」30号は「らくだ」で、平成29年(2017年)12月に歌舞伎座で行われた公演が収録されている。 本編51分。

紙屑屋久六に市川中車さん、やたけたの熊五郎に片岡愛之助さん、家主幸兵衛に市村橘太郎さん、家主女房おさいに片岡松之助さん、らくだの宇之助に片岡亀蔵さん他の配役。

「らくだ」は同題の落語を元にした世話物で、音声ガイドがなくても分かりやすく、面白い。乱暴なやたけたの熊五郎と気弱な久六が、フグの毒にあたって死んだ宇之助の亡骸を担いで大家の所へ行ってカンカンノウを踊る。大家から首尾よく酒をせしめた熊五郎と久六。ところが、酒を飲んだ久六が気が大きくなり、熊五郎と立場が逆転する。上方言葉で繰り広げられる熊五郎と久六のやりとりに加え、宇之助の亀蔵さんが良い仕事をしている。

「らくだ」はもとは上方落語だが、明治期に東京に移され、岡鬼太郎が歌舞伎「眠駱駝物語(ねむるがらくだものがたり)」を書いている。本号に収録されているものは、初代桂文枝の口述をもとにした堀川哲の脚本を奈河彰輔が改訂・演出し、さらに今井豊茂が演出したもの。

演出家の名前が3人記載されていることに興味を持ったので、2013年12月南座や2016年1月松竹座の番附の上演記録の備考欄から、上方版の脚本家・演出家を一部抜粋してみた。

  • 昭和3年3月本郷座 初演「眠駱駝物語」岡鬼太郎作
  • 昭和24年3月南座 「らくだ」初代桂文枝口述 堀川哲脚色
  • 昭和35年9月中座 「らくだ」初代桂文枝口述 堀川哲脚色・演出
  • 昭和40年6月歌舞伎座 「駱駝(らくだ)」初代桂文枝口述 堀川哲脚色
  • 平成23年12月南座 「らくだ」初代桂文枝口述 堀川哲脚本 奈河彰輔改訂・演出
  • 平成28年1月大阪松竹座 「らくだ」初代桂文枝口述 堀川哲脚本 奈河彰輔改訂・演出 今井豊茂演出

昭和24年から上方版も上演されていたのか。平成に入って、2人の演出家が手を加えたことが分かる。

2011年(平成23年)12月南座で上演されたときは、やたけたの熊五郎は愛之助さん、紙屑屋久六は中村翫雀(現・鴈治郎)さんで、上方の役者さん同士だった。2016年(平成28年)1月松竹座で上演されたときは、本号に収録されているのと同じく、やたけたの熊五郎は愛之助さん、紙屑屋久六は中車さん。中車さんの上方言葉がどうなるかと思いながら観ていたけれど、中車さんの言葉に違和感は覚えなかった。観劇後、購入した番附に載っていたインタビューに、「母(浜木綿子)方の祖父が大阪の人で、子供の頃、家の中は大阪弁でした。(以下、省略)」とあったので、なるほどと納得したことを思い出す。

松竹座もしくは南座で、愛之助さん・中車さんによる「らくだ」の再演を期待したい。

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