単品レンタルより600円安くなるということで、歌舞伎オンデマンドで三月大歌舞伎<昼の部>セット(「菅原伝授手習鑑 寺子屋」・「傾城道成寺」・「元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿」)をレンタルした。
まず、「寺子屋」。歌舞伎美人での上演時間は 11:00-12:24 1時間24分で配信は1時間25分だった。
配役は、松王丸に尾上菊之助さん、武部源蔵に片岡愛之助さん、戸浪に坂東新悟さん、涎くり与太郎に中村鷹之資さん、小太郎に尾上丑之助さん、百姓吾作に市村橘太郎さん、春藤玄蕃に中村萬太郎さん、千代に中村梅枝さん、園生の前に中村東蔵さん。
何度も上演されている「寺子屋」は、話の筋を楽しむより、役者さんたちの配役や組み合わせを楽しむ演目となっている。今回、菊之助さんが松王丸を演じるということに驚いた。前半、音羽屋型の銀鼠色の衣装で登場した菊之助さんだが、今一つ迫力に欠けるように感じた。後半、役目を終えて小太郎の父の松王丸となった姿に悲しみは見えたけれど、菊之助さんは松王丸より千代の方が合っているように思う。愛之助さんの源蔵は苦悩する姿が良く出ていた。新悟さんの戸浪は情の深さを見せていた。丑之助さんの小太郎は目力の強い凛とした姿。萬太郎さんの玄蕃は憎々しさがあまり出ていなかったように見えた。鷹之資さんの涎くりは元気はつらつ。玄蕃に頭を叩かれてごねる涎くりを、橘太郎さん演じる吾作が「犬のデコピンを買うてやろう」となだめる。今回限りの時事ネタ。吾作が涎くりをおぶうかと思いきや、涎くりが吾作を飛び越えて吾作を背負う、通常の演出で花道を引っ込んだ。梅枝さんの千代が抜群に上手だった。少し年上の菊之助さんや愛之助さんに負けない見事な千代だった。
次に「傾城道成寺」。歌舞伎美人での上演時間は 12:59-1:27 28分で、配信は29分だった。
配役は、傾城清川実は清姫の霊に中村雀右衛門さん、白川の安珍実は平維盛に尾上松緑さん、難波経胤に大谷廣太郎さん、真名辺三郎に大谷廣松さん、童子花王に坂東亀三郎さん、童子駒王に尾上眞秀さん、僧妙碩に大谷友右衛門さん、導師尊秀に尾上菊五郎さん。四世中村雀右衛門十三回忌追善狂言ということで、四世雀右衛門さんの息子の友右衛門さんと当代雀右衛門さん、孫の廣太郎さんと廣松さん、親戚の尾上松緑さんが出演している。
この演目は初めて観る。雀右衛門さん演じる傾城清川実は清姫の霊が花道のすっぽんから登場しただけでなく、幕切れもすっぽんを使って退場したのに驚いた。裃後見が二人舞台に出てきたけれど、女方の雀右衛門さんに合わせてか鬘も含め女方の拵え。初めて見た。これまで何種類かの道成寺物の演目を観ているけれど、全く別物だった。
最後に、「御浜御殿綱豊卿」。歌舞伎美人での上演時間は1:47-3:20 1時間33分で、配信は1時間29分だった。
配役は、徳川綱豊卿に片岡仁左衛門さん、富森助右衛門に松本幸四郎さん、中臈お喜世に中村梅枝さん、中臈お古宇に澤村宗之助さん、おいぬ某に小川大晴さん、津久井九太夫に澤村由次郎さん、上臈浦尾に市村萬次郎さん、御祐筆江島に片岡孝太郎さん、新井勘解由に中村歌六さん。
序盤、「寺子屋」同様にこの演目でもお喜世演じる梅枝さんの上手さが目を引く。おいぬ某演じる梅枝さんの息子小川大晴さんも堂々とした演技。しかし、主役の仁左衛門さんが登場すると一気に仁左衛門さんの世界に引き込まれた。仁左衛門さんはあと何度綱豊卿を演じるのだろうか。
この演目の一番の見どころは、仁左衛門さんの綱豊卿と幸四郎さんの助右衛門による言葉の応酬。お互いの腹の内を探り合う、緊迫感あるやりとりは見応えがあった。
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