歌舞伎オンデマンドで「傾城反魂香 土佐将監閑居・浮世又平住家」を観た。歌舞伎美人での上演時間は、土佐将監閑居が 11:00-12:30 1時間30分、浮世又平住家が 1:05-1:38 33分、合計2時間3分で、配信は2時間6分だった。
「土佐将監閑居」の配役は、浮世又平後に土佐又平光起に市川中車さん、又平女房おとくに中村壱太郎さん、狩野雅楽之助に中村歌昇さん、土佐修理之助に市川團子さん、女中お百に市川寿猿さん、土佐将監光信に中村歌六さん。
「浮世又平住家」の配役は、土佐又平光起に市川中車さん、又平女房おとくに中村壱太郎さん、大津絵の鯰に坂東新悟さん、銀杏の前に中村米吉さん、饗庭太郎に市川男寅さん、小幡次郎に中村福之助さん、醍醐三郎に中村玉太郎さん、蒲生四郎に中村歌之助さん、大津絵の奴に市川青虎さん、大津絵の藤娘に市川笑也さん、大津絵の座頭に市川猿弥さん、不破伴左衛門に市川男女蔵さん。
なお、当初の配役は又平女房おとくに市川猿之助さんだったが、休演のため壱太郎さんの代役となった。
「土佐将監閑居」はこれまで観てきたものと少し異なっていた。まず、又平夫婦が将監宅に来てから虎を追いかけてきた百姓たちがやってくる。(これまで観てきたものは、虎の騒動がひと段落してから、又平夫婦が来る。手みやげは酒だけ)。また、将監北の方ではなく女中お百が対応する。寿猿さんを出演させるため今回だけの配役かと思いきや、調べてみると、1979年7月に歌舞伎座で上演されたときも寿猿さんがお百で出演していた。細かい所だが、手水鉢に描いた自画像が裃姿だった。
「吃又」で初めて義太夫狂言での主役を勤めることになった中車さん、言葉が不自由な役どころのため顔芸が炸裂していたけれど、それがかえって又平の必死さを現わしていた。また、将監に「物見いたせ」と命じられて又平が花道で見張る時はまばたきをしないと言われているけれど、映像作品で鍛えられているためか、中車さんはまばたきなく見開いていた。
急遽おとく代役となった壱太郎さんだが、2017年1月浅草公会堂での公演で1度勤めているだけあって、口下手な又平に変わってよくしゃべるおとくを上手く演じていた。情に厚く熱い演技をする壱太郎さんと中車さんは良い組み合わせのように思った。
出番は短いものの、女中お百の寿猿さんは93歳とは思えないお元気さ。土佐将監の歌六さんは、さすがの存在感と演技で芝居を引き締めている。團子さんの修理之助は凛々しく爽やかだった。雅楽之助の歌昇さんは力強くて格好良い。(團子さんはいつ雅楽之助を演じることができるのだろうか)。
普段着から裃の正装への着替えの時、足袋も履き替えていたとは知らなかった。黒衣3人出てきて手際よく3分半ほどでお着換え。イヤホンガイドweb講座で知ったが、この時に流れる音楽は「物着(ものぎ)の合方」とのこと。
着替えた後に又平が踊りを見せるが、幼少期から踊りの稽古をしていたわけではないうえに、猿之助さんの事件によるストレスの中での稽古は相当大変だったことだろう。
定式幕が閉まり、おとくが又平に歩き方を指南して引っ込みとなる。壱太郎さんの姿に、坂田藤十郎さんの面影が見えたような気がした。
猿之助さんの事件がなかったら、どんな「吃又」になっていたのだろう。
「浮世又平住家」は、澤瀉屋の面々と若手たちによる気楽な舞踊の一幕。大津絵の襖が回転して絵から抜け出るという趣向が楽しい。藤娘の笑也さんは60代半ばとは思えない美しさ。奴の青虎さん、座頭の猿弥さんは適材適所。新悟さん、鯰が似合っている。終盤には又平の中車さんとおとくの壱太郎さんが軍兵たちと立ち廻りを見せるが、お櫃やらお膳やら出てきて食事をしながらの立ち廻り。包丁、まないた、たくあんが出てきて、おとくが本当に切ったり、すりこぎにすり鉢でとろろをすって、軍兵たちをきりきりまいさせるなど、楽しい振りもある。最後は、中車さんと壱太郎さんによる切り口上(「続いて、『児雷也』、『扇獅子』をご覧ください」)があって、全員で形を作って幕となった。
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