歌舞伎オンデマンド 通し狂言 仮名手本忠臣蔵 

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歌舞伎オンデマンドで「通し狂言 仮名手本忠臣蔵」を観た。通し視聴セット券は15000円だが、単品レンタルよりお得な料金でレンタル期間が2週間あり、Aプロ、Bプロで配役が異なるため、両方をレンタルして見比べた。(歌舞伎座遠征よりよほど安上りだ)。

せっかくの機会なので、国立劇場・歌舞伎の型1 仮名手本忠臣蔵 を読みながら鑑賞した。

大序・三段目

歌舞伎美人での上演時間は、大序が 11:00-11:47 47分、三段目が 11:52-12:38 46分、合計1時間33分で、配信時間はAプロ・Bプロともに1時間43分(開演前口上含む)、単品レンタルは3300円だった。

配役は、高師直に尾上松緑さん(A)・中村芝翫さん(B)、 塩冶判官に中村勘九郎さん(A)・尾上菊之助さん(B)、桃井若狭之助に尾上松也さん(A)・尾上右近さん(B)、鷺坂伴内に片岡松之助さん(A)・市村橘太郎さん(B)、加古川本蔵に嵐橘三郎さん、顔世御前に片岡孝太郎さん(A)・中村時蔵さん(B)、足利義直に中村扇雀さん。

口上人形による配役紹介からの配信が嬉しい。尾上菊五郎さん、中村歌六さん、中村梅玉さん、中村萬壽さん、片岡仁左衛門さんは名前を2回連呼したけれど、他の役者さんは1回のみ。役者さんの名前に応じての拍手の大きさが、そのまま知名度・人気を現わしていた。(観客は正直)。

高師直は松緑さんもがんばっていたけれど、個人的には芝翫さんの方が合っていたように思った。塩冶判官は、菊之助さんに比べて勘九郎さんが表に感情が出ているように見え、菊之助さんがより内に秘めて秘めて爆発するように見えた。孝太郎さんの顔世は安定したものだったが、時蔵さんの顔世は若いのに風格あるものだった。

三段目の進物の場での伴内と中間の合図が、松之助さんが右の足を出す、橘太郎さんがエヘンという咳払いで演じていて、2種類あるのを知った。

四段目

歌舞伎美人での上演時間は 1:13-2:45 1時間32分で、配信時間はAプロが1時間33分、Bプロが1時間30分、単品レンタルは3300円だった。

配役は、大星由良助に片岡仁左衛門さん(A)・尾上松緑さん(B)、塩冶判官に中村勘九郎さん(A)・尾上菊之助さん(B)、顔世御前に片岡孝太郎さん(A)・中村時蔵さん(B)、薬師寺次郎左衛門に坂東彦三郎さん、赤垣源蔵に中村松江さん、富森助右衛門に市川男女蔵さん、矢間重太郎に中村亀鶴さん、小汐田又之丞に中村橋之助さん、大鷲文吾に中村歌之助さん、佐藤与茂七に澤村宗之助さん、勝田新左衛門に中村吉之丞さん、大星力弥に中村莟玉さん、斧九太夫に片岡亀蔵さん、原郷右衛門に中村錦之助さん、石堂右馬之丞に中村梅玉さん(A)・坂東彌十郎さん(B)。

仁左衛門さんの由良之助はさすがベテランの安定の演技。松緑さんの由良之助は感情溢れる現代的な由良之助だった。

石堂が命令書を扇にのせ判官の遺骸に置くとき、梅玉さんは扇の要を外さず、彌十郎さんは扇の要を外していた。細かいところだけど、大きな違い。

道行旅路の花聟

歌舞伎美人での上演時間は 3:00-3:40 40分で、配信はAプロが40分、Bプロが41分、単品レンタルが2750円だった。

配役は、早野勘平に中村隼人さん(A)・片岡愛之助さん(B)、鷺坂伴内に坂東巳之助さん(A)・坂東亀蔵さん(B)、腰元おかるに中村七之助さん(A)・中村萬壽さん(B)。

重苦しい空気の四段目から一転、華やかな舞踊。同じように見えて、この演目も何点か違いがある。お軽の衣装が七之助さんは赤紫地の振袖、萬壽さんは紫の矢絣と違う。伴内の亀蔵さんは通常通りの赤と青の着物だったけど、巳之助さんは三段目と同じ裃に袴姿で登場して、途中で脱いでいつもの衣装に変わった。亀蔵さんとの最大の違いかつ見せ場は、幕切れに巳之助さんが花天たちとトンボを返ったところ。巳之助さんの身体能力の高さに驚かされた。

五段目・六段目

歌舞伎美人での上演時間は 4:30-6:13 1時間43分で、配信はAプロが1時間46分、Bプロが1時間45分、単品レンタルが3300円だった。

配役は、早野勘平に尾上菊之助さん(A)・中村勘九郎さん(B)、女房おかるに中村時蔵さん(A)・中村七之助さん(B)、千崎弥五郎に中村萬太郎さん(A)・坂東巳之助さん(B)、斧定九郎に尾上右近さん(A)・中村隼人さん(B)、判人源六に市村橘太郎さん(A)・片岡松之助さん(B)、母おかやに上村吉弥さん(A)・中村梅花さん(B)、一文字屋お才に中村萬壽さん(A)・中村魁春さん(B)、不破数衛門に中村歌六さん。

2023年3月に南座にて上演された「仮名手本忠臣蔵 五段目・六段目」で、上方と江戸では演出に大きな違いがあることを実感したけれど、今回はAプロもBプロも江戸の演じ方。それでも、演者によって(家のやり方によって)細かいところが違うのに気が付いた。

まず、判人源六の橘太郎さんは与市兵衛のことを「とっつあん」と呼び、松之助さんは「おやじ」と呼ぶ。江戸の橘太郎さんか、上方の松之助さんかで場の雰囲気が変わってきている。そして、菊之助さんの勘平が切腹した際には黒衣がついていたけれど、勘九郎さんのときは、おやかの梅花さんが仕事をしていた。今度舞台を観るときは、こういったところにも注意してみよう。

大序・三段目同様、菊之助さんの勘平はどちらかと言えば淡々としていて、勘九郎さんの方が顔に感情が出ていた。

七段目

歌舞伎美人での上演時間は 6:43-8:26 1時間43分で、配信はAプロが1時間42分、Bプロが1時間40分、単品レンタルが3300円だった。

配役は、大星由良助に片岡愛之助さん(A)・片岡仁左衛門さん(B)、寺岡平右衛門に坂東巳之助さん(A)・尾上松也さん(B)、赤垣源蔵に中村松江さん、富森助右衛門に市川男女蔵さん、矢間重太郎に中村亀鶴さん、大星力弥に尾上左近さん、仲居おつるに中村歌女之丞さん、鷺坂伴内に片岡松之助さん(A)・市村橘太郎さん(B)、斧九太夫に片岡亀蔵さん、遊女おかるに中村時蔵さん(A)・中村七之助さん(B)。

七段目はAプロもBプロも松嶋屋が大星由良助。仁左衛門さんが由良之助の七段目は南座の顔見世で観ているけれど(一力茶屋も鴨川もすぐそこやん、と思いつつ観ている)、さすがの安定感だった。一方、愛之助さんは大けがの療養から復帰の舞台で、初役の由良之助ということか、何かしら硬さを感じた。回数を重ねると、また変わってくるのだろう。

おかるの時蔵さんも七之助さんも美しい。時蔵さんの方が少し陰りがあり、七之助さんの方が少し明るいか。平右衛門の巳之助さんと松也さん、よくよく見ると、刀の置き場所や、形を決めるときの裾の取り方が違う。どちらも妹思いの兄だった。

十一段目

歌舞伎美人での上演時間は 8:36-9:02 26分、配信はAプロが24分、Bプロが25分、単品レンタルが1980円だった。

配役は、大星由良助に片岡愛之助さん(A)・片岡仁左衛門さん(B)、小林平八郎に尾上松緑さん(A)・中村萬太郎さん(B)、竹森喜多八に坂東亀蔵さん(A)・中村橋之助さん(B)、赤垣源蔵に中村松江さん、富森助右衛門に市川男女蔵さん、矢間重太郎に中村亀鶴さん、木村岡右衛門に中村玉太郎さん、大鷲文吾に中村歌之助さん、大星力弥に尾上左近さん、勝田新左衛門に中村吉之丞さん、佐藤与茂七に澤村宗之助さん、杉野十平次に市村光さん、近松半六に市村竹松さん、倉橋伝助に大谷廣太郎さん、織部弥次兵衛に大谷桂三さん、寺岡平右衛門に坂東巳之助さん(A)・尾上松也さん(B)、原郷右衛門に中村錦之助さん、服部逸郎に尾上菊五郎さん。

大きな違いは「奥庭泉水の場」での立ち廻り。Aプロは松緑さんと坂東亀蔵さんによる、長年の共演で息の合ったところを見せた。Aプロにて松緑さんは大序・三段目と十一段目とで大活躍だった。Bプロは萬太郎さんと橋之助さんの若々しい組み合わせ。溌剌とした激しい立ち廻りだった。

最後に、服部逸郎の菊五郎さんが締める。さすがの貫禄。

こうして通しで観ると、物語を含めて忠臣蔵は見どころが多く面白い。上方のやり方で通しを上演してほしいところだけど、難しいかな。

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