歌舞伎オンデマンドで「あらしのよるに」疑似生配信のアーカイブを観た。歌舞伎美人での上演時間は 11:00-12:30 1時間30分、1:05-2:07 1時間2分 合計 2時間32分で、配信は前説明や幕間などを入れて3時間25分だった。ちなみに、2024年9月に南座で上演されたときは、11:00-11:50 / 4:00-4:50 50分、12:20-12:55 / 5:20-5:55 35分、1:15-2:20 / 6:15-7:20 1時間5分 合計2時間35分だった。
配役は、がぶ/狼の長に中村獅童さん、めいに尾上菊之助さん、たぷに坂東亀蔵さん、みい姫に中村米吉さん、はくに市村竹松さん、のろに市村光さん、幼いころのめいに中村陽喜さん、幼いころのがぶに中村夏幹さん、ばりいに澤村精四郎さん、絵師に市川門之助さん、がいに河原崎権十郎さん、狼のおばばに市村萬次郎さん、ぎろに尾上松緑さん。この公演にて澤村國矢さんが2代目澤村精四郎襲名を披露した。
上演時間だけを見ると、9月の南座とほぼ変わらないけれど、絵師や、幼いころのめいに幼いころのがぶといった、南座では登場しなかった新しい役が増えている。また、市村光さんの役が南座ではぴかだったのがのろに変わっている。陽喜さんと夏幹さんがめいとがぶの幼いころの役で出演するのは観る前から納得するとして、南座とどう変わったかのにも興味があった。また、菊之助さんのめいや松緑さんのぎろがどのようなものかも楽しみだった。(ご自身が制作に関わった講談の歌舞伎化以外で、この10年、新作歌舞伎には殆ど出演していない松緑さんが「あらしのよるに」に出演するとは。配役見た時、目が点になった)。
幕開き、劇場内が暗転している中、絵師の門之助さんがすっぽんから登場。絵本の話というのを強調しているのか。そして、舞台中央のせりから狼の長の獅童さんと、幼いころのがぶの夏幹さんがせり上がってくる。本舞台を歩いて、すっぽんから引っ込む。短時間ながら親子共演で伏線も張られた良い場面だった。
そして、ばりいの精四郎さんが客席から登場して狼たちが舞台に登場する。南座は舞台に狼が登場するところからだった。精四郎さんには悪いけれど、ばりいは片岡千壽さんの方が良い。2016年9月南座初演時の、千壽さんの強烈なインパクトが残っているというのもあるけれど、精四郎さんはちょっと固い感じがする。
狼軍団の最後にぎろの松緑さんが登場。紀尾井町家話で松緑さんが言っていたが、歴代のぎろを勤めた役者さんと異なり顔を茶色にし、隈は左右非対称、千鳥足で歩くいかれた悪者だった。
続いて、めいの母のまつの中村蝶紫さんと幼いころのめいの陽喜さんが舞台中央のせりから登場して、やぎたちが舞台に出てきた。楽しく踊るやぎたちに、狼が襲いかかる。まつと幼いころのめいが狼に見つかり、まつはめいを逃し、ぎろの耳を噛みちぎる。幼いめいがいる方が、まつの必死さがより伝わる。
このように、発端は南座の時と大きく変わった。他に大きく変わったのは、森の動物たちの噂話そして狼による詮議がなくなったこと。栗鼠の蝶紫さんかわいらしかったんだけどな。獅童さんによる精四郎さん披露の劇中口上を入れるためにカットされたのだろう。ということで、南座ではあなぐまのぴかだった市村光さんが、今回やぎののろになったのね。
序幕になって、小屋の中で寝ていためいの菊之助さんが悪夢で飛び起きる。菊之助さんのめいは大人しく控え目な感じ。演者が変わると、印象も変わる。南座ではめい役の中村壱太郎さんががぶのおみやげの幸福草(おそらく三つ葉)をおいしそうに食べていたけれど、今回は作り物だった。がぶとめいが上手側から客席に降り、客席を通って花道に上がる演出もあった。南座では西洋人が座っている席を通って獅童さんが国際交流していたけれど、歌舞伎座はそうではなかったのね。(京都は外国人観光客多すぎ)。
南座と変わったところで目立つ(?)のは、おばばに対するぎろの褒美。手付の品が歌舞伎座限定めでたい焼き、成功報酬が歌舞伎座丸ごとと超太っ腹。南座は手付の品が井筒八ツ橋、成功報酬が iPhone 16 だった。これも紀尾井町家話で松緑さんが言っていたけれど、成功報酬は毎日違うものを言っていたそうな。
歌舞伎座限定なのかもしれないが、陽喜さんと夏幹さんによる幼いころのめいとがぶが出てくるのは、その後の展開も分かりやすくなって良かったと思う。また、今回は獅童さん、菊之助さん、そして松緑さんと年齢の近い役者さんたちによる、がぶ、めい、ぎろで、バランスが取れていたように感じた。
次に「あらしのよるに」が上演されるのはいつだろうか。
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